Q
事故後だいぶ時間が経つのですがまだ示談が成立しません。時効にかかってしまわないか心配なのですが,自賠責保険の請求権はどのくらいで時効になるのでしょうか。
A
被害者請求の場合は,傷害の場合は事故日の翌日から,死亡の場合は死亡日の翌日から,後遺障害による損害の場合は症状固定の翌日から,それぞれ3年です。
被害者請求権は3年の消滅時効にかかります(自賠法19条)。初日不算入の原則(民法140条)
があるので,傷害の場合は事故日の翌日から,死亡の場合は死亡日の翌日から,後遺障害の場合は
症状固定日の翌日からが時効の起算日となります。複数の後遺障害があって症状固定日が異なる場
合には,最も遅いものが起算日となります。
加害者請求権についても,3年の消滅時効にかかります(保険法95条1項)。賠償金の支払日の
翌日から3年ということになります。
任意保険がない等の事情で加害者に資力がない場合,被害者請求権が時効になってしまうと,保
険金の支払いを受けられなくなるおそれがありますが,自賠責保険会社で時効中断申請の手続をす
れば時効中断を承認する書類を発行してもらえるようです。
一度自賠責保険が支払われた後に追加払いを請求するとき(例えば,後日の訴訟で自賠責保険の
認定を上回る後遺障害等級が認定された場合や死亡保険金を請求して保険金額未満の額が支払われ
たものの,後日の訴訟で自賠責保険の額を超える賠償額が認定された場合)には,以前の支払の時
点で債務の承認(民147)として時効が中断しますが,さらに3年経つと時効になってしまうの
で,時効中断申請しておく必要があります。
被害者請求権が時効になってしまうと,加害者が賠償金を支払えない限り,支払を受けられなく
なってしまうのか,という問題がありましたが,最高裁昭和56年3月24日民集35巻2号271頁は,
「自賠責保険契約に基づく被保険者の保険金請求権は,被保険者の被害者に対する賠償金の支払を
停止条件とする債権であるが,自賠法3条所定の損害賠償請求権を執行債権として右損害賠償義務
の履行によって発生すべき被保険者の自賠責保険金請求権につき転付命令が申請された場合には,
転付命令が有効に発せられて執行債権の弁済の効果が生ずるというまさにそのことによって右停止
条件が成就するのであるから,右保険金請求権を券面額ある債権として取り扱い,その被転付適格
を肯定すべきものと解するのを相当とする。」と述べて,被害者の賠償請求権(自賠3)に基づい
て加害者請求権の差押転付命令を得れば,被害者が自賠責保険の加害者請求権を行使できるとしま
した。
⑴ 3年(自賠法75条)です。
⑵ ひき逃げ事故の場合,加害者らしき者が見つかっても,加害者でないと争われることがあり,
その者に対する損害賠償請求訴訟をしたものの敗訴した場合,てん補金請求が時効になってしま
うのか,という問題がありました。
この問題点について,最高裁平成8年3月5日民集50巻3号383頁は,「ある者が交通事故の加
害自動車の保有者であるか否かをめぐって,右の者と当該交通事故の被害者との間で自賠法3条
による損害賠償請求権の存否が争われている場合においては,自賠法3条による損害賠償請求権
が存在しないことが確定した時から被害者の有する本件規定による請求権の消滅時効が進行する
というべきである。」としました。加害者ではないかと見られる者に対する損害賠償請求訴訟を
している間は,てん補金請求権の行使が期待できないからです。
そのため,加害者ではないかと見られる者に対する敗訴判決が確定したときから時効が進行す
ることになります。
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